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マーケティング、コミュニケーション、リサーチ。

マーケティングの成功には、コミュニケーションとリサーチの両輪が必要です。マーケティングは売れる仕組み作り。コミュニケーションとリサーチは共にターゲットとの相互交流ですね。

感性×理性が仮説を生み出す鍵

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マーケターやリサーチャーは、「世の中はいまこうなっている(=インサイトの仮説)という事を独自の視点で捉え、コミュニケーションプランやレポートに反映する必要がありますから、インサイトに対する良質な仮説を思いつけるかどうかは非常に重要です。ではどうしたら良質な仮説を思いつけるのでしょうか?

 

答えは非常にシンプルで、インプットの量×質で決まると考えています。

 

そもそも誰しも、情報が無ければ物事を考える事すら出来ませんから、あるテーマについて考えを深めたければ、そのテーマのインプットを増やすことが最善です。

まず最初に、体型系な知識を得る為に類似テーマの書籍を数冊読むことをオススメします。同じ著者のものは基本思想や主張が似通っていますから、出来れば複数の著者の書籍に触れましょう。書籍間で共通して語られている事は、要点である事が多いはずですし、違いがあればそれは、解釈に様々な視点がある事に気付けると思います。書籍から体系的な知識を一通り得たら、次はそのテーマに関する最新のフロー情報(SNSやWEB、雑誌に掲載されている様な情報)に目を通します。フロー情報なので表面的なトレンド・ブームを伝えている事が多いのですが、体系的な知識がベースにあれば、本質を見失わずに最新情報をアップデートする事が出来ます。

 このようなインプットを得た後、実はこれが一番重要だと思うのですが、現在流行っている情報に積極的に触れに行く事が重要です。例えば最新の直木賞を受賞した書籍を読んだり、OLの間で流行っているスイーツをデバ地下に買いに行ったり、話題の映画を興味なくても観に行ったり、とにかく「多くの人の心を動かしている物・場所」に出向いたり、ふらっと美術館やインテリアショップに入るなど、業務時間中には出会わない物・場所に触れる事を心がけます。感性を磨く努力をする、と言い換えても良いかもしれません。例えば仮説を持ちたいテーマが、「アクティブシニアが本当に実現したいこと」「通信キャリアにおける新規事業を考える」というものだったとしても、感性を磨けるような「多くの人の心を動かしている物・場所」に触れる事をオススメします。なぜなら、良質な仮説やアイデアというものは、様々な情報の結び付きによって生み出されるものであり、遠い距離にある情報同士が結びついた時ほど、先人が考えもしかなった仮説・アイデアに繋がるように思います。そのような良質な仮説やアイデアは、まず頭の中でパッと思いつき(これは右脳的な働きだと思います)、それを左脳的な働きで論理的に整理していく、というプロセスで形作られるのだと思っています。

 例えば大ヒット映画でご覧になられた方も多い「君の名は。」を例にとれば、登場人物たちの純粋で一途な想いと昔の自分を重ねた人も多い事でしょうし、少し突っ込んで解釈すれば、男女の入れ替わりを日常に溶け込ませる事で、男らしい男・女らしい女が素晴らしいという従来の価値を否定している様にも感じられます。個人としては様々な感想を持つかと思いますが、マーケターやリサーチャーのスタンスとして大事なのは、それでも日本に限らず中国でも大ヒットしたのはなぜか?と考える事が重要です。私の場合はまず「みんな寂しいのかな」という仮説がパッと浮かびました。何かのインプットした後に訪れるこの”パッと浮かぶ”仮説やアイデアというのは、後述しますが実は非常に重要です。この仮説をもう少し肉付けをすると「若者を中心とした多くの人々が、現代のコミュニケーションに寂しさを感じているから」だと捉えました。そう感じた理由を整理していくと、スマホやSNSによっていつでも誰とでも繋がれる一方で、目の前に友達や恋人、場合によっては家族がいたとしても、いつも誰かとLINEやチャットをしている。同時に多くの人と繋がっているけど、それは希釈化された薄いコミュニケーションばかりで、心に残らない。いつも何故か寂しさを感じる。だからこそ、三葉と瀧くんが交わす時空間を超えたコミュニケーション・想いの強さと濃ゆさが胸に残ったのだ---。これは仮説なので正解かどうかはわかりませんが、この仮説を更に一歩進めて「コミュニケーションがデジタル化する現在だが、人々の心のスキマを埋める様な、Face to Faceのサービスやコミュニケーションの価値が再評価されるかもしれない」とすれば、新しいアイデアに繋がっていきます。

 

別の観点から業務時間中には出会わない物・場所に触れる事の重要性を説明すると、業務中に触れる情報のほとんどはテキストや動画などほぼ視覚情報です。

しかし街で得られる情報は視覚だけでなく五感で情報を得られる情報です。香ばしく焼きあがったパンの臭い(嗅覚)、人々の他愛ない会話内容や自動車のエンジン音(聴覚)、パッと手に取った斬新な形をした商品の手触り(触覚)などなど。街に出かければ自分が意識せずとも五感を刺激する情報と出会うチャンスは無数にあり、こうした五感情報を体内に蓄積させる事は、良質な仮説を生み出す土壌を作っている事と同義だと思うのです。私たちが日々の生活で意識できる情報は、全身で受け取っている情報の3%で、残りの97%は無意識で受け取っている情報だと言われています。街に出かけるという事は、この97%の情報を集める作業なのだと思います。この97%部分に良質なインプットを蓄積出来ていると、前述の“パッと仮説が思い浮かぶ”という現象に繋がります。データをこねくりまわしても、調査結果とにらめっこをしても、いつもと同じ場所でうんうんと頭を捻っていても、新しい仮説は生みだせません。それはインプットの量もバラエティ(質)も不足しているからです。

 

私はマーケティングリサーチ業界に関わって10年以上経ちますが、マーケティングやリサーチに従事している方々は本当に皆さん忙しく働いています。また仕事が好きな方も多く、仕事の報酬は仕事という考え方で、新しい事に挑戦し続けている素晴らしい方も多くいらっしゃいます。一方でそうであるが故に、活動範囲はオフィス・クライアント先・実家周辺に限定され、交友関係も仕事の延長ばかり・・・という方も多いのが現状です。そうした方々が良い仮説やアイデアを持てるでしょうか?頑張っていても、どんなに忙しくしていても、アウトプットでクライアントに価値(新しい気付きや感動)を提供できなければ意味がありませんし、価値を提供できないマーケターやリサーチャーは、発注主の作業代行に貶められてしまいます。

 

マーケターやリサーチャーとして「世の中はいまこうなっている」「生活者はいまこれを求めている」という事を誰よりも理解するには、もっとインプット量を増やし、質を高めなければなりません。繰り返しですが、その為にはもっと街に出掛け、様々なものに触れる必要があると思います。もっと遊ぼう!というという事かもしれません。

良質な仮説は、感性と理性の共同作業で生み出されるのだと思っています。